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●奨学金を債務整理する場合の注意点
多重債務に関するご相談の中には、奨学金の支払いが困難で債務整理をしたいとおっしゃる方が少なからずいらっしゃいます。奨学金についても法的には債務整理が可能ですが、通常の貸金業者等からの借金とは内容を異にするため、最新の注意を払う必要があります。
(1)連帯保証人への請求
奨学金債務を支払うことができず自己破産を選択すると、奨学金は連帯保証人が支払わざるを得なくなります。そのため、連帯保証人への影響も考えた上で、債務整理をするかどうか選択するべきです。日本学生支援機構の奨学金について機関保証としている場合には自己破産も選択の余地がありますが、その場合でも必ず専門家に相談するようにしてください。
(2)任意整理に応じないことも多い
任意整理とは、債権者との交渉によって将来分の利息をカットしたり長期の分割払いを約したりするための和解締結作業です。そのため、債権者の同意が得られることが前提なのですが、日本学生支援機構はこの和解を拒否することで非常に有名です。そのため、例えば日本学生支援機構の奨学金のみ除外して任意整理を進めるなど、高度な法的判断が必要となります。
●奨学金の返済が困難な場合には
このように、奨学金に関して任意整理を行うことは非常に困難が伴います。また、日本学生支援機構の奨学金については、多額の延滞金を付した返済要求をしてきたり、消滅時効にかかっている債権を請求してきたり、そもそも契約が有効に成立していないにもかかわらず依然として返済請求をしてきたりするような事例が存在します。お困りなことがございましたら、東久留米司法書士事務所までご相談ください。
また、奨学金の返済が困難な場合には、任意整理以外に以下のような方法を取ることもできます。
(1)所得連動返還型無利子奨学金制度
無利子の第一種奨学金の貸与を受けた者(ただし、大学院を除く。)について、奨学金の貸与終了後一定の収入を得るまでの間、返済期限を延長することのできる制度です。この制度を利用するためには日本学生支援機構に対する申し出が必要です。また、奨学金の返済義務が免除されるわけではないことに注意が必要です。
(2)返還期限の猶予申出制度
奨学金の返済が困難である一定の事情があるときに、日本学生支援機構へ願い出と証明書を提出することによって奨学金の返還期限を一時的に延長してもらう制度です。
(3)その他
そのほかにも、減額返還制度、延滞金減免制度、返還免除制度、返還期間変更制度など様々な救済制度が存在します。奨学金債務について一番良くないのは、黙って支払いをしないことです。支払いをできない事情がある場合にはいくつもの救済制度がありますので、必ず連絡するようにしてください。